2013年7月26日金曜日

1.6. 創造性の発揮を阻害する負の要因 - 1.6.2. 偽善

1.6.2 偽善


自分自身に正直であることはなんと困難なことだろう。他人に正直である方がはるかにやさしい。― エドワード F.ベンソ

 
一番だまし易い人間は、すなわち、自分自身である。― パルワーリットン

 
家庭内ではがさつ者,外へ出たら天使。― ドイツのことわざ

 
一つの偽りが千の真実を損なう。― アフリカのことわざ

 
これは 弱さ故に発生する事象の一つである。意図してうそを語ったり、家の内側と外側で二面性を持つなどの方法で偽善的な態度を示すことはもってのほかであるが、それよりも厄介かつ深刻なのは、自分の考えや気持ちを正直に分析し把握することができずに、事実と偽った(または乖離した)自覚を持ち、それに基づいて判断を下すという類の偽善である。人は知ってか知らずか自分自身で自分を欺くことがあるのである。ありのままの心は本当に不実である。

例えば、父親が正直なところ、会社における立身出世から快感を得ることが会社に勤める主たる動機であるにもかかわらず、自分は家族のために“のみ”日夜働いていると誤って自覚しているという場合がそれに当たる。また、他人から傷つけられ、正直なところ傷つけた当人に仕返しができなければ、或いは傷つけた当人から心からの謝罪がなければ傷つけた当人を許すことができないという気持ちであるにも関わらず、仕返ししたい気持ちや許せない気持ちを、悪い感情であると決め付け、悪い感情を持つことはいけないことだと判断し、仕返ししたい気持ちや許せない気持ちを全くケアすることなく、相手に対する悪感情を完全に打ち消そうとするという場合もそれに当たる。
思考をすることもなく、自分の心を欺いたり、麻痺させたりして、実際に存在している事実をあたかも存在していないかのようにするのである。

何故こうした作用が起きるのだろうか?

 
それは、自分自身や社会が描く本来の理想から外れた状況にあるという紛れもない現実に直面することにより、当人が罪悪感や羞恥心に責めさいなまれ、その状況を真正面から受け止めることができないという心の弱さが関係している。人は一度こうした状況に陥ってしまうと、人として自由意思を行使することができなくなり、正しい思考のプロセスを踏襲できない人になってしまう。結果として、他人の決定に従う判断しかしない人になったり、自分の目先の利益を得たいと言う感情を優先する人になったりし、自分自身や他の人を欺く行為に出ることになる。

しかし、正しい事を行う人は、自分の考えや気持ちを正直に分析、把握し、それを受け止め、正しい思考により思いを作り直し、良いものを選択する行為を行う。

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